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第二回 松見 充康氏との対談

対談第二回 松見 充康氏 

松見氏対談1P目

第二回 松見 充康氏との対談 松見 充康氏(元 三喜商事株式会社 常務取締役)
1979年、京都産業大学外国語学部言語学科(イタリア語専修)卒業後、三喜商事株式会社に入社。
営業職、MDなどの経験を経て、MaxMara Japanのゼネラルマネージャー、SANKI Europe srl代表取締役、MaxMara Japan専務取締役、さらにFENDI Japan、Christian Diorの役員を務めると、その後はValentino Japan代表取締役社長/CEO、Aeffe Japan, Moschino Japan両社代表取締役社長と海外ブランドのトップを歴任。

「未来の社長、社会人への入り口」


山本: よろしくお願いします。なんかまず、僕よくやるんですけど、なんていうんですかね。海外とかでたまに、めっちゃ移動せなあかんときあるじゃないですか。
松見: はいはいはいはい。
山本: そういうとき、3時間とか余裕であるでしょう?スイスまで行かなあかんとか。
松見: はいはいはい。
山本: なんかこう皆、割としょうもない話するんですけど、僕、結構、相手が社長とかやったら、ビジネスの遍歴を教えてくださいって結構、言うんですよね。それで、1時間ぐらいつぶれるじゃないですか。フフッ。
松見: (笑)
山本: ね、車に3人ぐらい乗ってたら。で、結構、知り合いいるんですよ。
松見: ふーん。
山本: あとは、そんな商売してんやったらこれ見ましょうみたいな話はやっぱよく出るな、なんですよ、俺。で、それをちょっと教えていただけるとうれしいなと思いますけど。
松見: はい。
山本: まず、中高はどこ行ったんですか。
松見: 中学ですか。
山本: はい。
松見: 中学は、あの、八尾のほうにいたんです。
山本: 八尾?
松見: 八尾。
山本: ああ、めっちゃ大阪ですね。へえー。
松見: で、高校は山本高校。
山本: どこですか、山本高校って。
松見: うー、八尾の次の駅ですね、近鉄でいうと。
山本: あ、河内山本?
松見: はい、はい。
山本: あー、僕の友達も住んでた。
松見: あ、そうですか。
山本: はい、はい、ほおー。
松見: で、大学は京都産業大学。
山本: ああ。
松見: はい。
山本: なるほど。高校はなんかやってたんですか。
松見: えーと、中高とラグビーやってました。
山本: そうですね、強そうですもんね。大学ではどんな感じで生活してたんですか。
松見: 大学はね、あの、外国語学部だったんで。
山本: なんで外国語、学部に入ったんですか。
松見: えーと、本当はフランス語をやりたかったんです。
山本: なんでフランス語なんですか。
松見: あのー、アラン・ドロンに憧れてたんで。
山本: アッハハ。
松見: ハハッ、単純な。
山本: 単純です?
松見: 単純。
山本: 楽しそうでいいんじゃないですか。
松見: はい。で、ところがフランス語学部は競争倍率が高過ぎて。
山本: あ、そうですか。
松見: 英米語の次に高かったんですよ。女性が多かったですね、当時はね。フランス語受ける人がね。
山本: なるほど。
松見: で、イタリア語が、まあ、ちょっと低かったんで、じゃあ、イタリア語にしよかと。
山本: (笑)一緒やろと?
松見: うん、割と安易な。(笑)
山本: え、じゃあ松見さん、しゃべれるんですか、イタリア語。
松見: イタリア語と英語がしゃべれます。
山本: すごいっすね、はい。
松見: え、フフッ。だから、あの、本当はアメリカンフットボールやりたかったんですけど。
山本: はい。
松見: あのー、2単位、必須科目2単位なんで。そんなことしてると留年するという話を聞いて。もうクラブは断念しました。
山本: なるほどね。そんなでも忙しいですか。そんな?
松見: らしいんですよ。全部必須なんで、出ないと単位取れないんでね。
山本: なるほど。でででで、で、4年間ですか。
松見: そうです。
山本: その間、じゃあイタリア行ったりとかしてたんですか。
松見: してません。あのー、国内です。
山本: ふーん。どんな大学生活してたんですか。
松見: 19の時、2回生の時に父親が急死したんでね。そっからちょっと急転しましたからね。生活も学費もままならん状態なったんで。
山本: あ、マジですか。
松見: ええ。もう働きながら。
山本: なんの仕事したんですか。
松見: 京都の東一条って、京都大学の、すぐ近くに。日本イタリア京都会館というのがあるんですね。そこで守衛の夜勤のアルバイト。そこから学校に通ってました。まあ、夜間ですからすることないんで、取りあえず勉強せなと。
山本: (笑)
松見: で、今もあるかも分かりません、京都産業大学は成績に応じて学費免除っていうのがあったんですよ。
山本: へえー、うんうん。
松見: だからちょうど2回生で亡くなったんで、3回生、4回生はその基準をクリアしたんで学費免除でした。
山本: へえー、その、トップ3パーセントとかじゃないですか。
松見: よく分からんですけどね。その代わり、もう必死に勉強しました。
山本: やったった感すごいですよね。
松見: そこはね。大変でしたけど、それなりに一つの自分の人生にはなりましたね。
山本: 成功体験のひとつに。
松見: そうですね。
山本: その時、プライベートってどんな遊び方なんですか。
松見: もうその時はねえ、それこそ当時の学生っていうと、もうパチンコ屋行ってるか、マージャンするかですから。
山本: 変わらないですね。(笑)
松見: 僕、あの、マージャン知らないんで。
山本: 20年前も変わらんな、やってることが。服はその時、あんまり好きじゃなかったんですか。
松見: えーと、興味は持ってたんですよ。だから、就職活動はほとんどアパレル系でしたね。
山本: 他にどんな所、受けたんですか。
松見: 商社の八木通商。
山本: 八木通さん、はい。
松見: で、もう一つは商社系で松下電器貿易というの。今のパナソニックの、そういう会社があったんです。商社系で。
山本: へえー、豊田通商みたいな感じですね。
松見: はい。とか、あー、あとはラピーヌ。イトキン。市田、三喜ですかね。
山本: ほおー。全部受かったんですか。
松見: いえいえいえ。当時やっぱり、大学のね、国公立と私立、完全に分けられてたんで。
山本: 枠が?
松見: ええ。
山本: あ、そうなんや、へえ。
松見: もう、あの、試験会場まで違いました。なんかそれぐらい明確に、学校で最初に選別されてたんで。
山本: もちろん国公立のほうがいいってことですよね。
松見: そうです。
山本: 試験会場違うってすごいですね。今やったら問題ですね。
松見: そうですね、そうでしょうね。だから、端っから駄目な、いわゆる書類で学校が私立だから駄目だっていう所もありましたしね。
山本: あ、そうですか。
松見: で、三喜商事とラピーヌさんと受かったんでしたかね。で、一番先に合格内定いただいたのが三喜商事やったんで、もう三喜商事に決めさしてもらった。
山本: 行こかと。
松見: はい。というのはやっぱ、せっかくイタリア語、必死に頑張ったんでね。できたら使えたらなと。
山本: ふーん、なるほどね。その、兄弟とかはいるんですか。
松見: 弟がいます、1人。
山本: へえー。弟さんは何されてるんですか。
松見: あのー、えーと、鉄関係の仕事で、それ運んでます、今でも。
山本: へえー。じゃあ全然違う畑ってことですね。
松見: 全然違います。
山本: で、じゃあもうストレートで、三喜さんに入ったって感じですね。なんか新入社員当時のあるあるエピソードないんですか?(笑)
松見: あのねー、もう全く服飾用語知らなかったんで、もともと希望はね、総務人事やったんですよ。
山本: フフフ、全然意味ない。
松見: そうそう。で、それが洋品部っていって、まあ、メンズもレディースも、何もかもが一緒になってる部署があったんですね。そこが三喜商事の中で一番大きかったんですよ。で、そこでおまけに営業になったんで、それこそファッション業用語も分からないし、営業マナーも分からないし。
山本: そんな、でも一緒じゃない? みんなそうじゃないですか。
松見: いやあ。おまけに車も本当にペーパードライバーでしたんでね。もう何もかもが大変でした。で、物を先売りしないといけない。
山本: はい。
松見: シーズン中は、お伺いに行って返品取らないといけない、集金しないといけない。ていうふうなこととかね。全部、まあ、当たり前のことですけど初めての経験でしたし。
山本: 委託じゃないんですか。あー、買い取りじゃないんですか、これ。
松見: 買い取りです。買い取りですけど委託も併用してるんで。
山本: それはどういう仕組みなんですか。
山本: 3割買い取りとか。
松見: オーダーをまず最初に先取りするじゃないですか。半年前ぐらいに。で、それは買い取りで入りますよね?で、在庫を取っとるんで。
山本: はい。
松見: で、余剰で、、ある在庫については売れ筋も取ってますから、それを一番大口の所に委託で送ると。
山本: ああ、なるほど。
松見: 多分、今もそれやってると思いますけど。委託で売れた分の委託売り上げと、本伝契約の返品したいというのをそこで相殺したりとか。
山本: ああ、なるほどね。まあ、そこら辺はちょっと、ま、なんかまあ、ちょっと面倒見さしてもらうというか。次も買うてよねっていうことすね。
松見: そういうことですね。
山本: なるほど。それ、どうやって克服したんですか。
松見: まあ、もう慣れるしかないんでね。車の運転するのと一緒ですよね。もう何回もぶつけましたけど。
山本: (笑)
松見: あの、もう本当に嫌なお客さんの所ほど、足しげく毎日のように行きました。慣れるように。
山本: それ、偉いですね。それ自分で考えたんですか。
松見: いや、もうそれしかないかなと思って。やっぱり分かるじゃないですか、新入社員で何も知らんっていうのは。
山本: 分かりますね。
松見: ねえ。で、何も知らんのが偉そうじゃないんですけど、いわゆる、持ってる用語が少ないんで。
山本: (笑)
松見: きちっと、こう、そのー、婉曲的に話ができないっていうんですかね。
山本: 説明できない?
松見: 説明し切れないんですよね。もう、それでちょっと短気な人は腹立てるし、もういなくなるし。
山本: 新人付けやがってみたいな。
松見: ええ、そういうのもありましたね。そんな所ほど、もう毎日のように行って、嫌な社長に会って、お説教聞いてっていうような。それで割と、かわいがっていただけるようにはなりましたね。
山本: その営業方法ってやっぱりその、三喜さんの中で、もうとにかく面倒くさいおやじっていうか、ツーコールみたいな、あったんですか。
松見: あんまりね、一から十まで手取り足取りじゃないんですよ。もう見て学べという。
山本: ああ、なるほどね。
松見: だから当時は車がありましたので、社用車で運転させられて、で、お客さんの所に連れていかれて、いわゆる会話を見て覚えるっていうんですか。
山本: 車内で、こう「部長、あれってどういうことでしょう?」こういった感じで質問したりとか、そんなノリじゃないですか。
松見: あとは、いわゆる飲みニケーションですよね。もう毎日のように連れてかれましたもんね。
山本: (笑)
松見: そんな飲めないのに毎日もう、付きあわされ。
山本: それ何時頃から行くんですか。
松見: えーとね、6時まででしたから。
山本: 朝、何時からなんですか。
松見: 朝は9時半から。でも僕らはもう8時半には行って。フロア、掃除しないといけないんで。
山本: なるほど。掃除しろよ、おまえらみたいな。1時間も掃除するんですか。
松見: えーと、それからそうですね、フロアの整理を。結構、広かったんです、200坪ぐらいあったんで。 二人- (笑)
山本: なるほど。新人が整理して。で、6時ぐらいまで。え、6時に終わるんですか、早い。
松見: 6時なんですけど、大体まあ、7時、7時半までいますんで。
山本: そうですよね、うん。
松見: それから、この街界隈の居酒屋行って、流れてまた行ったりとか。
山本: 当時ってもっと安かったんですか、やっぱり。
松見: 安かったですなあ。
山本: なんで、なんで?
松見: 安かったですなあ。
山本: なんでそんな声、小さくする、フッフ。安かった?
松見: 安かったですなあ。
山本: どのぐらいやったんですか。2000円とか?
松見: 2000円とか3000円じゃなかったかな。高くても。
山本: 高くても?
松見: ええ。よく飲まされましたね。
山本: へえー。
松見: あのー、だからほとんど飲めなかったんですけど、会社入るようになって飲めるようになりました。
山本: あ、そうですか。
松見: ええ。みんなそうですよ。もともと強い人もいますけど、大体、入ってから飲まされて強くなる。
山本: 何時ぐらいまで飲むんですか。
松見: 長い人に捕まると、日にち変わってしまいますから。
山本: アッハハ、帰れないでしょう?
松見: 帰れないです。
山本: それはどうするんですか。
松見: 僕はミニバイクで通ってたんで。
山本: はい、はい。
松見: だから毎日、飲酒で。
山本: アッハッハ、なるほどね。
松見: フフッ。
山本: もう時効っすね。
松見: うん。
山本: 時効、フッフッフ。
松見: もう飲酒運転でした、毎日。
山本: え、じゃあ河内山本まで?
松見: いえいえ、そのときはもう谷町6丁目にいました。
山本: ああ、谷町ですか。まあ、そしたらじゃあ、ピッとって感じですね。
松見: はい、はい、はい。
山本: てか、そうじゃないともたないですね。
松見: もたないですよ、もたない。
山本: お金も持たないし。
松見: うん。
山本: 8時半にまた、フフッ、なんか、フッフッフ。
松見: そうです、そうです。またそれで。
山本: それ、もちろんおごりなんですか。
松見: えー、おごりもあるし割り勘もあります。
山本: あ、そうですか。(笑)
松見: (笑)

「取引先の印象的な人たち」


山本: 昔の店長で面白かった人ってないですか。店長というか、取引先で。
松見: 取引先ではですね、あのー。
山本: 有名な人。
松見: それぞれが特色のある人ばっかりだったんで、それこそ昔の洋装店に働いてた方が独立してっていうパターンが多いんですよ。
山本: 洋装店って、なんなんすか。
松見: 例えばね、多分、ご存じないと思うんですけど、大阪の心斎橋だとモデルンさんっていう店とか。
山本: モデルンさん?
松見: はい。オリタさんとかですね、ワカイケさんとかっていうのが、生地屋さんの老舗やったんです。で、そこで、働いてた方が独立されたりとか。まあ、僕らよりまださらに年が10個ぐらい上の方々でしたからね。
山本: うん。
松見: だからもう、すごい性格的に特徴のある人ばっかりです。
山本: どんなんですか。
松見: だからもう、とことんしゃべりまくる人か、もう全くしゃべらない人か。で、オーダーに来ても全くオーダーする感じでない人とか、もう来るなりオーダーし始める人とかですね。
山本: (笑)でもそれは社長がやるんですか、やっぱり。
松見: いや。
山本: お姉さんじゃなくて。
松見: 専門店の場合はほとんどご主人、ご夫婦でされてるパターンが多いんで、ご主人が社長です。で、奥さんが専務とか副社長という名前で2人でやってはるんです。
山本: 大体、そのパターン?
松見: うん、そうなんです。で、中に右腕みたいな人が1人おられたりするんですけど、スウィングさんってご存じないですか。ポニーさん。
山本: ポニーさんは聞いたことがある。
松見: あそこなんかでも典型ですわ。もう社長さん亡くなられて奥さんが今、社長されてると思いますけど。
山本: ああ。じゃあ大体、じゃあ奥さんが商品決めるって感じなんですか。
松見: そうです。と、もう一人、右腕の人が必ずいて2人で仕入れるパターンです。
山本: なるほどね。

「営業時代の必勝パターン」


山本: なんかこう、営業のやり方で松見さんの必勝パターンとかないんですか。
松見: あのー、僕らは着れないじゃないですか、婦人服。
山本: うん、着れない。
松見: 婦人ばっかりだから。婦人の場合、着れないんで、僕は婦人の雑誌を見て流行が何かってのはつかまないかんと。だから婦人の雑誌はよく買いました。
山本: なるほど、へえー。
松見: 国産もあればインポートもあるんで、その中で何色がはやってるとか、どんなスタイル、デザインがはやってるとか、どういう丈になってるとか。それをセールストークにしてお話をすると、話がやっぱ弾むんですよね。
山本: 思い出の勝ちパターンないですか。
松見: あー、そうですねえ。
山本: その時、松見さんが売ってたブランドって全部ですか。
松見: イタリア、フランス、英国、全部でしたね。
山本: へえー。どんなブランドですか、当時やったら。
松見: えーと、当時でいうとクリツィア。
山本: クリツィア、懐かし、懐かしい。
松見: もう、ものすごい売れましたよ。
山本: クリツィアあるんすか、まだ。
松見: 今もあります。今は中国のファンドが買い取りましたけど。当時はものっすごい売れました。
山本: ものっすごいって。
松見: 商売でいくと100億以上売ってましたよ。
山本: あ、そうですか。へえー。
松見: クリツィアはレディースだけじゃなくメンズもあったし、レディースの中でラインが三つあって、ライセンスが1個、それにプラスしてましたなあ。ものっすごい売れました。
山本: 懐かしい。あとはどんなんですか。
松見: あとはね、英国物でイエーガーっていう。
山本: うん。
松見: これもものっすごい売れましたね。あと伊藤忠さんで今、販売されてるスポートサック、パラシュートの生地のバッグ。
山本: ああ、ああ、はい。
松見: あれももう、ものっすごい売れました。当時、だから大体、200件から250件は契約付けに来られてました。
山本: 日本全国から?
松見: ええ。あの、西日本だけで。
山本: 西で200件?
松見: ええ。
山本: へえー、すごいな。
松見: で、担当店舗が一番多かったときで45件でしたかね。
山本: 45件?
松見: ええ。
山本: フッフ、大変やな。じゃあもう西をずっと回るんですか。四国回って九州回ってみたいな。
松見: 四国は四国担当、九州は九州担当と分かれてました。僕は最初、京阪神担当で、その後、中国地方と神戸を担当して。それから、南九州だけ担当しました。
山本: へえー。行ってたんですか。
松見: 行ってました、もちろん。
山本: じゃあ、もうブワー回って。
松見: うん。商品だけ送っといて、で、向こうでロングボディーのキャラバンを借りて、荷物積んで売り歩いてたんです。
山本: え、そんなのすぐ売り切れません?
松見: 売り切れませんけど、お金の回収もあるんで。
山本: はいはい。
松見: 商品を見せながら、お金も。
山本: 松見さん、これ分かんないんですけど、なんで回収しに行くんですか。振り込んでもらうんじゃ駄目なんですか。
松見: 当時は、そういうのがあんまりなかったんです。というのはね、昔ながらで手形が多かったんですよ。
山本: あ、そういうことか。
松見: 90日の手形とか、長い所は120日の手形とか。で、いわゆるもう平均残高で例えば1000万とか500万残ってると。
山本: はい。
松見: で、その上に買うとかビジネスが続いてるんで、売掛残が積み上がってきますよね。
山本: はい。
松見: で、これ放っとくとね、1000万ずっと寝てしまうんですよ。
山本: 寝てますね。
松見: で、これを例えば決算月とかに、この分だけを長くてもいいから手形で取りあえず、未決済残として残るんですけど、帳面上の残はゼロにしたいという話をしに行くんですよ。だから1000万の手形をもらいながら、こっちはこっちで小切手で少しずつでももらっていくということ。
山本: じゃあ回収を現金じゃなくて小切手でしたから、売掛残はなくなったよっていうことですか。
松見: 手形でもらうとですね、6カ月先でも、まずはその分は手形が本当に通るか不渡りになるかは別として、取りあえず回収、事実じゃないですか。
山本: そうですね、うん。
松見: 1000万もらってきましたと。で、その当時になって不渡りになったことも何回かありますけども。取りあえずはそこで回収率を上げる。
山本: なるほどね。
松見: 回転日数は上がりません。
山本: なるほど。半年後にその手形を落とすときに、三喜さんにはお金入ってくるってことですよね。
松見: そうです。
山本: じゃあそれまでに、それぐらいは何とかしろよ、小売店さんっていうメッセージだっていう感じですね。
松見: そういうことですね。それがどうしても必要だったんで回らざるを得ないんですよ。
山本: それは、あれですよね? 手形送ってくれって言っても送ってくれないから。
松見: もう、もちろん。(笑)
山本: アッハハハ、行って、社長お願いしますっていうノリですよね。(笑)
松見: それとか、集金に行きますって言わないと、いついつで入金お願いします言ったところでそんなん……。
山本: そのノリなんですか、やっぱり。
松見: やっぱり競合する何社かあるんで……。
山本: 払ってくれへんのや。
松見: やっぱりビジネスが大きいとこほど後回しなるんですよ。小口ほど先に払う。
山本: あ、そうなんですか。
松見: そうなんです。小口ほど払いやすいじゃないですか、30万、50万のほうが。
山本: フッフ、どうなんやろ。いや、どっちやろな。分からないですけど。
松見: 当時はそうやったんです。だから、大口だから悪いけど今回、1000万あるけど100万だけねとか。
山本: あ、いっぱい、よく買ったってるからってみたいな、そんなノリなんですか。
松見: その代わり返品取ってねっていう話なんで。
山本: フフッ、めっちゃ嫌やわ。(笑)
松見: ウフフ、ま、そういうパターンが多かったです。
山本: 返品って何割ぐらい取るんですか、オーダーの。
松見: 大体ね、15パーセントから20パーセント。
山本: あ、結構いきますね。
松見: いきます、いきます。
山本: その返品ってあれですよね。要は500万買ったら、じゃあ20パーセントなんで100万返品やったら、100万分の商品入れますよ、ですよね。
松見: そうですね。
松見: ところがそうなると、買いたくなければ売れるもんがないからって断られますわね。ほな、もう帰ってくるだけですよ。
山本: ああ。それ、どれぐらいけんかするんですか、当時は。
松見: うーん。
山本: フフフッフッフ。
松見: そのー。
山本: 僕なら怒鳴り込む。(笑)
松見: うわっ。継続性があるかどうかですよね。それと、お金払いがどうかって。やっぱり最終的に、卸業者なんでお金もらってビジネス成立ですから。
山本: まあ、終わりますね、それだと。
松見: だからやっぱり、お金の払いも悪いし返品も多いっていう所は、おのずともう切らざるを得なくなってきますね。
山本: ああ、お行儀悪いですもんね。
松見: はい。
山本: あ、今も昔もやっぱ一緒やな。
松見: (笑)
山本: 今のお店でも、お行儀悪い人はお行儀悪いでしょう、本当に。でも本人はあんまりお行儀悪いと思ってないですからね、あれ。
松見: ですね。
山本: そう、それがなんか分かんないですよね。フッフッフ。
松見: 昔これで通ったという頭があるからちゃいます?
山本: ああ、それがスペシャリテだったにも関わらず、それは通るんだと思ってしまうってことですかね。
松見: そうだと思います。
山本: でも逆の気持ちになったら100パーセント分かりますけどね。
松見: ああ、分かりますね。
山本: だって、イタリアからモノ引っ張ってきて、先金付けて売って、金もらわれへんってどういう気持ちやねんていう話ですけどね。
松見: 問屋業っていうのはその辺がちょっと、つらいですよね。で、今はね、だいぶ変わってきて、売れるブランドをやると、その辺、楽なんですよ。だから、例えばもう完全買い取りの50パーセントとか。で、現地発注というのがあるんで、ミラノとかパリとかで、もしくはニューヨークで直接オーダーを置いてもらうと。
山本: めっちゃいいじゃないですか、それ。
松見: これはもう完全買い取りです。だから、行った時点でオーダーがフィックスされて売り上げもある程度、ただノンデリがあったりとか、クレームがあったりしますから。
山本: うんうんうん。
松見: で、どうしても返品したいというのも中にありますけどね。ただ、そんな20パーもいかないですね。
山本: なるほど。商売的にどれぐらいの利益率なんですか。三喜さんて。
松見: 利益率はね、そら、粗利率は50以上ないと。
山本: はあ。じゃあ25のものを50で売るって感じですか。
松見: 例えば、向こうで原価が100としますよね。
山本: はい、向こうの原価が100。
松見: これにマークアップを2倍にするのか3倍にするのか4倍にするのか。
山本: ああ、なるほど。
松見: だから基本ですねえ、今は現地のリテール価格、店頭価格の大体、ルイヴィトンだと1.3倍。で、他のもんで1.5倍から1.8倍以内です。
山本: うん。
松見: で、現地の価格帯というのは、ヨーロッパの場合は、いわゆるコストの2.3倍、2.7倍から2.8倍が小売価格です。
山本: ふーん。
松見: アメリカが2.3倍です。
山本: なんでこんな違うんですか。
松見: 多分ね、税金かも分かりませんけど。
山本: 関税ですか。
松見: 関税かも分かりませんけども。
山本: 消費税とか、ふーん、なるほどね。じゃあ向こうで原価100のものを、まあ、250とかで売って、それをこっちの現場は倍の500とか600とかで売るって感じですか。
松見: ということです。
山本: ふーん、なるほどね。そういうことか。
松見: だからプラダとか、もうそこそこ値段かかってると思います。日本上代は。
山本: なるほど。
松見: マークアップは。
山本: 確かにイタリアで買うのと全然値段が違いますからね。なんか僕、こういうのってのがやっぱり、並行輸入がやっぱりあったりするじゃないですか。あれとなんか、三喜さんって戦ったりするんですか。
松見: あのー、値段ではもうどうしても戦えないんですよ。やっぱり並行のほうが、間にほとんど人が入ってないですよね。
山本: はい。
松見: で、三喜の場合は直で仕入れてたとしても、やれ保険料、運賃だ、人件費だとか、もろもろの経費がかぶってくるんで、どうしても値段は高くせざるを得ないんですよね。
山本: 会社も大きいし。
松見: ええ。で、並行の場合は恐らく為替のリスクはそこに加味しないと思います。
山本: はい、そうですね。
松見: 恐らくTTSで予約したそのままが、為替の金額として反映されてると思うんですね。
山本: はい。
松見: そこでも違うんです。
山本: その並行屋さんとは戦わないんですか。よくあるのは、メーカー側に「もう卸すな、おまえ」って言って、よくやったりするじゃないですか。
松見: いやあ、日本の場合はそれ法律の縛りがないんで。日本政府は認めてますからね、それは。
山本: あ、違います。えっと、並行屋さんと戦う唯一のやつは、もうメーカーさんは並行屋さんに売るなって言うだけ、言うしかないと僕はないと思ってて。
松見: そうですね。
山本: それはやらなかった。
松見: やってないです。
山本: へえー。男前。
松見: やってもやっても次から次へ出てくるんで、それは、いわゆる人気のバロメーター。
山本: うんうん。
松見: 並行屋が扱う物は市場で受けるということなんで。ディオール時代なんかまさにそうでしたから。並行物以外に偽物もいっぱい行きましたからね。だからカスタマーサービスの担当の責任者なんていったらしょっちゅう警察へ行ってましたから。これ、本物ですか、偽物ですかって。
山本: へえー。
松見: 空港へ行ったりとか。で、これは本物か偽物かっていうのをカスタマーサービスの人間が見て、これは偽物ですよ。
山本: それ、どうやって見るんですか。
松見: やっぱり。
山本: めっちゃ面白い、うん。
松見: そいつは、そういうことしかしないんで。鑑定士みたいなもん。
山本: 分かるんですか。
松見: 分かるんです、ちゃんと。
山本: どれぐらいで分かるんですか。もう、ピッて見て分かるんですか。
松見: いわゆる素材と縫い方と、プリントがそのまんまだったとしても、素材とプリントとパーツですね。金属、刻印とか。それで全部違います。
山本: へえー。それは、本社からはこういうもんやぞっていうのを情報あるってことですか。それとも現場で物見てるから分かるって感じなんですか。
松見: 現場で見てます。必ず見てます。
山本: ちゃんとした商品を見てるから分かるんですか。
松見: 大体ね、死に筋で並行で入ってこないんで。売れ筋しかこないじゃないですか。
山本: そりゃあそうですね。(笑)
松見: で、売れ筋で入ってくるということは、売れ筋をつかんどけば絶対間違いないですよね。
山本: ま、確かに売れないやつ入ってきても別に怖くない。どうでもいいですもんね。
松見: はい。
山本: じゃあ、それが偽物やったら、これは偽物ですって言って……。
松見: そうです。そしたらもう入ってこなくなります。その業者に対して輸入はできないようなります。
山本: それもすごい権限ですね。かなりすごい権限ですね。じゃあ本物やったらどうするんですか。
松見: 本物の場合は法律に触れないんで、日本は。
山本: まあ、いいですよっていう感じです?
松見: はい、日本だけ。
山本: それ、むかつくけど本物やけど偽物って言ったりしないんですか。
松見: ハハハ、それない。
山本: これ、並行むかつくなみたいな、フッフフ。
松見: (笑)
山本: それしないんですか。
松見: それはないですよ。
山本: 男前ですね。(笑)
松見: それは当時、インポートがなんでも売れたときって、個人で行って個人で下げてきましたからね。
山本: あ、僕も行きましたもん、大学生の時。
松見: だからそれはディオールやシャネルの口紅からバッグから靴から、もうなんでも一人で担いで帰れる時代でしたからね。今はそんな人、少なくなりましたけど。
山本: なんで当時は多かったんですかね。
松見: なんぼでも売れたからですよ。もう、それだったら売れたんですよ。
山本: なるほどね。
松見: で、売れ筋をちょっとでも安く買えるんならその方がいいから。
山本: 確かに。そらそうや。

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