対談第四回 星 正壽氏
星氏対談4P目
卸業者との商売のやり方
山本:問屋の展示会って聞いたことないですね、あまり。
星:聞いたことない? やってるよ。
山本:結構やってるんですか。
星:三菱食品も大阪でやってますよ。
山本:でも三菱食品ぐらいでかかったらやるのかも。僕らアパレルやったらあまりそんなんしないですね。
星:アパレル関係はね、メーカーの数もそんなに。
山本:ないですね。
星:ないからね、やっぱり。食品は結構やってますよ、国分にしても。だから普通、食品問屋との取引っていうのはないんだ。
山本:あります。
星:あるんですか。
山本:あるけど在庫商品だけなんで、もうショットでリストが送られてくるんですよ。だからラー油82個みたいな。何たらかんたら167個みたいなやつを僕らも、決まった掛け率で。
星:だからそうすると、その問屋さんどこか知らんけど、絶対、展示会やってますから、そういう招待状もらって行って、メーカーさんに直接、頼んだらいいんですよ。なんかないってそういうの、僕はこういう者なんだけど、大阪だと有名人なんだろうから社長は。
山本:いや。
星:それでこういうの探してんだけど、帳合いはここの、例えば国分さんなら国分さんでいいから、分けてくれない?って。
山本:メーカーから直接、買えないんですか。
星:直接はメーカー売らないと思う、内緒で売るところもあるかもしれないけど、そういうのだったらもうすとんと持ってっちゃう。そういうふうなことやりゃいい。で、1回来てくださいって。ほんで交渉する。
山本:なるほど、分かりました。帳合い。
星:だからどこから買うかだけは決める。帳合いじゃないとやっぱりこう、社長のところの口座を作んなきゃいけないから。
山本:面倒くさいですもんね。
星:面倒くさいんで、それだったらもう問屋さん、もう口座がある問屋さんの帳合いで買ってあげると。直で買っても、通してもそんな変わんないってことですよね。
山本:問屋さんってでも、すごい薄利ですよね。
星:薄利多売。
山本:の、究極形ですよね。
星:うちもPBで稼ごうとやってますけど、そんなにですね。リリーの缶詰、知ってるでしょう。
山本:知ってる。
星:あれはうちのブランド。昔、野崎商事ってあれが作ってたフルーツ缶ね。みんな、昔は大阪でお見舞い持ってくるのはリリーの缶詰ですよ。
山本:風邪ひいたらリリーですよ。
星:リリーのパイナップルとか桃缶。
山本:あれなくなったんですか。
星:あれが関西ではすごい強かったんですよ、リリー。東じゃ全然だけど。
山本:じゃあもう、あれは儲からなかったんですか。
星:儲かってましたよ、関西は。他が儲からないから。
山本:やめたってことですか。
星:今もあるんじゃない。あまりしてはいないと思うけど。昔みたいに果物屋とか行ったらリリーの缶詰、並んでたでしょう。
山本:昔だって缶詰、売れましたもんね。
星:やっぱり甘いもの離れなんですよ。糖度が高いから。
山本:離れてるんですか。
星:うん。今、甘いものみんな食べないですよね。
山本:そうなんですか。
星:今、甘いもの離れですよ。
山本:ほんまに?
星:甘いもの、ほんまに変わってますよ。同じ甘いものだって砂糖の種類を変えたりして。
山本:パルスイートみたいな。
星:そう。だから本当、昔でいう上白糖、グラニュー糖とか売れないですよ。それだったら、三温糖とかあっちのほうがまだ売れる。あと黒砂糖とか、味の素のパルスイートとか、あんなのばかりですよ、今、売ってるの。砂糖ってものすごく売り上げが落ちてるんですよ。
山本:そうなんですか、めっちゃショックやな。そういうものに対して欲望を感じなくなっていってるんですね。
星:なんなんだか分からないけどね。あまり甘いものは売れなくなってる。でもスイーツって一生懸命ばかみたいに食べてますけど。男がああいうの食べるようになるね。
山本:僕も行きますよ。僕も甘いの好きやから、めっちゃ。
星:甘いものは嫌いじゃないけど、僕はどっちかっていうと年だからあんこ系のほうが好きなのね。
山本:それ年いったら、やっぱりあんこ好きになるんですか、僕あまりあんこ好きじゃないんですけど。
星:なんでだろうな。
山本:そういうふうになるんかな、やっぱり。
星:クリームとかねちょねちょして嫌なんですよ。
山本:なるんですね、多分。
星:年か、昔からそうなのかもしれないけど、そうなんですよ。大福もうちは最近、駄目ですね。おなかにたまって、昔みたいに食べれなくなったりするんですよ。
山本:(笑)なるほど。砂糖売れなくなってるってあれだな。
星:そうなんですよ。
最初の結婚で学んだ仕事と家庭の両立
山本:話は少し戻るんですけど、本当じゃあ嫁さんとは3回になるんですか、3回目。
星:もう3回目です。
山本:子どもさんはいるんですか。
星:いない、1人も。両方とも子どもだけはいないのね。
山本:仕事と家庭の両方をどうやって両立させてました? やっぱり組織で上いく人って、仕事するじゃないですか、だから仕事にいっぱい時間使うじゃないですか、土日も関係なく。で、またやったら嫁がぎゃあぎゃあ言い出しません?
星:今の女房はもう仕事終わり頃だから、一緒に結構、遊んでます。
山本:2人目はどうでした。
星:前の女房は、亡くなったのは、彼女も医者だったですから。
山本:え?
星:お医者さんだったんです。
山本:医者やったんですか。
星:精神科医なんだけどね。北海道に行ったときもずっと仕事してましたから、お互いに仕事してるんで。
山本:じゃあついてきてくれて、やってたんですか。
星:いや、北海道に行きたかったのは彼女が行きたかった、北海道オタクですから。
山本:どういうこと、すごいな。
星:俺と東京で結婚したんだけど、北海道にいつ行けるの、いつ行けるの、北海道にぜひ行かせてもらう、北海道で死にたいって言われて。
山本:ややこしい女子やな。
星:それでいろいろこうして、裏で手をこうして、よし。
山本:じゃあ自ら行ったってことですね。
星:そう、僕の1年先輩の人が北海道の支社長やってたから呼んでもらった。
山本:なるほどね。
星:それで北海道へ行って、ずっと仕事してる間、女房は向こうで仕事してた。その代わり、土日はほとんどどこか行ってましたね、女房と。
山本:北海道、行く所いっぱいありそう。
星:北海道はいっぱいある。
山本:広いしね。
星:それで車の運転好きだったから、俺よりも彼女のほうが運転して。
山本:永久に運転できますよね、広いから。
星:知床1泊2日で行って流氷見てくるとか、よくやってた。
山本:知床って渡れるんですか、知床は渡れるか。
星:渡れます。
星:あと北海道ぐるぐる回ってました。
山本:車で。
星:うん、北海道って結構お風呂が、何とかスパとかスポット、ちょっと大きな温泉みたいのがいっぱいあって。
山本:結構あるんですか。
星:いっぱい温泉あるんで、彼女も出掛けるとき、よく車にお風呂セット積んで。それで大体、疲れたらその辺で風呂入ってくるとか。だから北海道はあれだよ、そいつが東京にいるときにも旅行好きだから、いついつ空いてるとかって言われて、いいよって言ったらもう旅行の日程がどんどん決まって。僕はただついていくだけでした。
山本:めっちゃ楽ですね、めっちゃ楽っていうと怒られるかもしれんけど。
星:団体旅行というか、電車、全部、乗り物決まって。
山本:オタクですもんね。
星:旅行、北海道以外も随分、行きましたね。でもそいつとは。最初のやつは構わな過ぎて、俺が悪いんだろうなとは思っている。
山本:それけど、学びになりました? 僕もバツイチなんですけど、僕も最初の離婚はかなり学んだって感じですね。
星:やっぱり僕が仕事ばかりしてたからじゃない、一番の原因は。いろいろ考えるとやっぱり俺が悪いなとは思う。だから2回目のときはすごくやっぱり、大事にしてっていうか。
山本:よく2人でいた。
星:遊ぶようにしてましたね。だからお医者さんだってお金持ちだから。
山本:それどうやって出会ったんですか。それ、すごくないですか。
星:それは遠い親戚なんですよ。遠い親戚っていうか、うちのおふくろの弟の嫁さんが、俺のおふくろの弟の嫁さん、おばさんだね、僕の。その人とうちのその亡くなった女房のお母さんが姉妹。
山本:遠いね。
星:でも田舎の話だから、ちっちゃいときから知ってたわけ。あそこのお兄ちゃんっていうのをよく知ってたから。こいつもばかだから結婚しなくて、なんかのあれでひゅっと会って。
山本:1人目から2人目の間ってどのぐらいですか、10年ぐらいですか。
星:そんなにない、7年かそこら、7、8年じゃないかな。
山本:で、ぴゅっと会っていいんじゃないかと。
星:もう会ってすぐみたいな感じでしたね、俺と結婚したのは。
山本:ぴんと来たんですか。
星:来たのかな。
山本:来たんでしょう。
星:いや、こいつが働けば楽ができるなんて。
山本:めっちゃおもろいな。だって嫁さんのほうが給料高いから。
星:高いですよ。だから北海道に行ったとき、支社長かな、副社長ぐらいのときに、俺が一生懸命、長時間働いた年収と……。
山本:9時5時のね。
星:向こうは週に3日ぐらいしか行かないわけですよ。非常勤だったから、3日ぐらい行ったり、4日行ったりで、ほんで時間通りある程度、終わるじゃないですか。一緒ぐらいでしたから、だから時給が全然、違うわけですよ。
山本:倍ぐらいちゃいますね、いや、やっぱり医者強いな。
星:でも、精神科医っていうのは、俺だったら自分も病気になるんじゃないかなってね。おかしくならない?って聞いたら、なるって言ってましたから。
山本:そうですか。
星:で、やっぱり一番つらそうだったのが、精神科医をやってて入院させるでしょう、それでだんだん元気に、少しはまともになってくるじゃないですか。で、退院させたんですよ、ある人をね。その日のうちに自殺されたみたいで。こたえてたね、本当に。でも向こうの親が、「星先生にはすごくよくしてもらったから、ああなったのはしょうがない」と言って、「本当に星先生と会えて、うちのは良かったと思います」って言ってくれたから、助かったけど、あれはつらいな。「私これ3回目ぐらいだ」とか言ってたよ、そういう経験。
山本:大変な経験や。
星:で、なんで北海道に来たかったかっていうと、松山千春の追っかけなんですよ。松山千春のコンサートはもう全部。
山本:全部、行ってたんですか、すげえな、ほんまに行ってそう。
星:松山千春って北海道の足寄の出身で、松山千春の実家まで行っちゃう。で、お母さんとお茶飲んで帰ってきて。
山本:どういうこと?
星:連れてかれて。
山本:ピンポンってやって、ファンなんですけどみたいな。
星:そうじゃないですか。
山本:めっちゃおもろいやん。松山千春さんって、いくつぐらいでしたっけ。
星:松山千春は俺より一つか二つ下ぐらいかな、一緒ぐらいかな。足寄から札幌まで高速道路がつながってる。松山千春のために鈴木宗男が作った道路ですから。
山本:ほんまに?
星:だから鈴木宗男の応援をちゃんと、松山千春はやるんですよ。いろんなことやるから。
山本:話が面白いな。今まででちょっとギャグっていうか、笑いが一番、面白いような気がする。
星:(笑)
マトンの記憶
山本:食べ物ってなんかあります? 星さん。
星:嫌いなのは唯一マトン。
山本:北海道なのに。
星:生ラムのおいしいやつならいいけど、それ以外は嫌だと。昔、学生時代にヨーロッパ旅行したときに、ステーキが出てきたの、ドイツで。こっちのステーキやからうまそうだなって、食べたらマトンだった。うおってなって、それから駄目。
山本:マトンのステーキってめっちゃ珍しいですね。
星:昔ドイツは貧乏だから、ジャガイモと。
山本:ソーセージですよね。
星:ソーセージぐらいしか食べるものないんだよね。で、何かステーキ頼んであれして、ツアーのあれだよ。もうそれから全然、駄目。
山本:羊のステーキは厳しいな。
星:でも、北海道行ってラムのおいしいジンギスカンは、食べられるように。
山本:だって、においしないですもんね。
星:においしない。だるまとかあるんですよ。
山本:うまいですからね。
星:他にもいっぱいうまいところありますよ。
山本:マトンは何かというと、安くてうまいですよね。
星:松尾ジンギスカンって丸いやつ、あれは昔のマトンだよね。好きな人、北海道の人はそれがいいんだよ、あのにおいが。俺あのにおいが駄目なんだよ。
山本:僕もそやけど、食えるけどにおいはないほうがいいっすわ。
星:あのにおいちょっとね、ただ今はもうサッポロビールガーデンとかああいうとこでもほとんど生ラムを出すから、めったにくさいのなくなったけどね。