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第一回北田正喜氏との対談

対談第一回 北田正喜氏 

北田氏対談4P目

「一生の支えになる濃い3ヶ月間」

第一回対談


山本:なるほど勉強になります。ところで
北田:さんの経歴の話に戻すと、企画室いって、構造改革みたいなことをしたってことですよね。
北田:そうですね。経営企画的なことを依頼されて、役員から。
山本:完全に出世コースやね。
北田:まあ、そのときは選ばれたんでしょうね、確かに。
山本:いやいや、選ばれるべくして選ばれているでしょう。
北田:まあ、それはそのときの役員が推薦してくれたんでしょう。38歳だったと覚えてますけども、そのときは結構勉強してましたよ。
山本:どうやってですか。
北田:ほかの仕事しなくていいから、それを考えろって3カ月ぐらい。
山本:3カ月?
北田:3カ月ね。
山本:考えろ。
北田:構造改革案を作れと。
山本:すげえな、俺、そんな給料払われへんわ。すんごい。
北田:大きな会社でしたからね。
山本:いやあ。
北田:今でいうと、そういうのは多分ない。今、もし俺がその会社にいたとしたら、今は経営企画部がちゃんとあって、常にそういうのをやってるやつがいるわけですよ。当時、そういうやるやつがいなかったのね、要は。いわゆるそういう経営にかかわる政策論を作る専門部署がなかった。で、たまたま当時の常務だか専務だかに言われて、1人アシスタントの女の子も、ちゃんと組織だから人事異動もしてアシストの女性も1人つけてもらって、構造改革案を作ってくれって話になった。そのとき作った今でも家に持ってますけども、よく考えたなと思いますよ。
山本:主にどこからなんですか。あんまり言えないと思うんですけど、簡単に言うと。さっきの4Pでいうと。
北田:そこっていうよりも組織の在り方とか。
山本:あるいは部長がいて課長がいてみたいなの、まずいってことですか。
北田:そういう意味じゃなくて、営業、企画、生産、広報、そういう改正、会社全体の組織の在り方とか、どうあるべきだ。今後、この部署はもっとこういうことやるべきだとか、あとは新しい職務、職種が必要じゃないかとか。やって、今の組織にはないでしょ?例えばマーケティング室だとか、あと僕が作った言葉でマーチャンダイジングコントローラー。仕入れ担当とは違って、マーチャンダイジングコントローラーっていうのはいそうでいなかったんですよね。
山本:いそうでいない。
北田:仕入れ担当がやるような感じだし、営業がやるような感じだし。要するにモノを仕入れて営業に渡すっていうのは仕入れがやるんだけど、在庫のときからその投入したものがどう動いてて、材料をコントロールする役割がなかった。そしてMCって作って、MDに対してMCっていうのを作って。MDとMCはセットにして。で、出荷業務っていうのは片方でもう一つ、百貨店とかモノを物流センターが集荷しなきゃいけないでしょう、集荷作業とかもあるので、そういうのも誰がやるのかとかそういうやり方論全体の構造改革。そうすると、端的に言うと、この部署はこんだけの人数でできるはずだとかっていうとこも出すわけですよ。
山本:だいぶ突っ込みますね。
北田:もちろん。それはリストラにもつながるわけ。だからこういう人数は要らない。
山本:いい意味のリストラですね。
北田:そう。で、こっちの部署に人数を配置すべきだとか。で、そういう構造改革、全体の構造改革。こうすると会社としての経営効率が上がるんだと。
山本:会社全体何人ぐらいですか。100人ぐらい?
北田:いやいや、もっと1桁多いから、1500。
山本:え!そうか。もうレナウンですか。
北田:当時はダーバンですよ。ダーバン当時、700億ぐらいだったから。
山本:ん!すみませんでした。
北田:700億ぐらいで、正社員が1500ぐらいかな。店頭にはもっといるよね。拠点数が1000以上あるから、合計して3000、4000っているけど、本社はだから東京、大阪支店と二つしかわからないから。あと営業所は名古屋とかいろいろと九州とかあるけど、いわゆる大きな部署は東京と大阪。そういう組織論、じゃあ、出張所は必要なのか必要じゃないのかっていう。
山本:ここの卸先はどこやるべきだとか。
北田:営業担当どうすべきとか、ブランドの配置をどうするべきか。それはもちろん損益分岐点があるので、儲かってるブランド儲かってないブランド。そういう解析もするんだけど、解析までするやつはいっぱいいるんだよね。こうなってます、こうなってますってね。
山本:「どうしろ」やね。
北田:ここまでやるやつ、誰でもいるんですよ。こっから先どうしたらいいかを出せるかどうかがポイント。どうすればこの会社、だからどこに向かいたいかが企業のビジョンが必要なんですよ、要は。何なりを黒字にしたいって話なのか、いや、こういう形の黒字にしたいのか。将来こうするためにこうしているのか。これ、経営ビジョンがない人構造改革作れないんです。それは仮説を立てながらやるんですけども、そういう構造改革全体案を作って。だから3カ月ぐらいかかるわけですよ。あとネーミングだとか考える。
山本:ネーミング超重要。
北田:MCとかいうのは僕が、今、会社で全部使ってるけど、あれは僕が1992年、3年かな。
山本:めっちゃ前や。
北田:その頃に作った僕の構造改革案から生まれた言葉を使いました。まだ残ってる、そういうのね。そういうのいくつかあります。MDっていうのも本来、世界中どこにもない、日本しかにない職業で、それを作ったのはレナウンさんですよね。
山本:じゃあ、
北田:さん。
北田:私じゃないです。これは私よりだいぶ先輩、当時副社長が作った言葉です。MDっていうのはマーチャンダイザーっていいますけども、ブランドマスターって言い方もあったり、いくつかあるんですよ、企業によって言い方が。要するに、商品企画担当ではないんです、本来は。もうちょっと責任が重くて、ブランド全体のプランニングをする責任を負う人っていう言い方もある、ブランドマネジャーとかっていうのもあるし、いろいろ言い方あるんだけど、MDっていうと今は企画担当に近いんですね。デザイナーとパタンナーと組んでMDを、その商品を作るっていうのがあるけど、MCっていうのは商品コントローラーみたいな仕事を、それは名前でじゃあどんな職務をする人、職務分担の分ける表とかね。出荷するのは、いわゆるディストリビュートするディストリビューターっていうのが一般でもありますけども、その役割だとか。システム投資をしなきゃいけないとか、総合的に考えるからね。要するにこの部門はシステム入ってないとか、当時まだ90年、バブルちょっとあとかな。何でやったかって、バブル崩壊して売り上げがどんどん下がったからですよ、全体が。
山本:で、何かせなあかん、で
北田:さんが?
北田:そうそう。バブル崩壊がちょうどきた92年にアメリカから僕が91年に戻ってきて、
山本:戻ってこいですか。
北田:戻ってきたのは売り上げがもちろん下がり気味になって戻ってきて、それで経営企画部にその足でなって、考えてほしいって言われましたんで。それは僕はアメリカで経験したことも踏まえて、多分会社は期待したのかもれないけど、何か斬新なアイデアが欲しいわけ。
山本:(笑)
北田:これからどうすべきだと、この会社は。
山本:斬新なね(笑)。
北田:発想を変える。でもそれかなり頑張って作って、いろんな要素を含めて作りましたけども、役員会に僕が答申するわけじゃないから、専務が僕に委託したわけで、専務が役員会でどの部分を使うかが僕にはわからないわけ。
山本:え、
北田:さんが全部説明するんじゃないんですか。
北田:そうじゃない。
山本:そうなんや。
北田:専務の委託を受けて、その人が考えたわけじゃないけども、僕が原案を作ってるものだ。原案を作ってその人が僕のものを受け入れて、その中の、今思うといいとこ取りされたかなっていう気もしないことないかも。
山本:我慢してください(笑)。
北田:要するに本当にやってほしいとこはやんなかったですよ。本当に手をつけるべきだっていうところは、ちょっとまだ早いみたいな。それはもう経営が判断することで、まだ私38歳、課長ぐらいだからね。
山本:悔しいですね。
北田:うん。でもその資料はずっと今も持ってるし、その後も私は役員になったり、会社の経営にかかわるときには、そういう意識は常にあって。やっぱりそのとき考えたことって、なかなか人間そういう時間ないのよね。
山本:ない。
北田:集中してやるときが。
山本:ない。
北田:だからすごくそれは自分の人生にとっても、アメリカの経験も大事だけど、その3カ月は非常に重要。まあ、実際6カ月ぐらいあったかな。大変重要で、やっぱりいろんなとこ行ったり調べたりして、やっぱりほかの企業も調べるし、いろんなことがあって、今どうやったらこのバブル崩壊したあとで、そのアパレルが刷新していく中で、何が重要?まあアメリカの企業も。意外とそういうのって後々残ってる。そのあとまた俺の関わる仕事が、企画の仕事が営業ってなったら、そんなの知らない。そういう意味では、たまたまぶつかったときは大変な時期だなと思うけど、自分にとっていい経験になって、後々生かせることはありますね。そのあとは営業でまた復活してっていう。
山本:じゃあ企画室から営業に行って、営業部長にみたいな感じになって。
北田:まあ、元は3年ぐらい営業課長やって、営業部長になって、そこから取締役員になって。大阪支店長になったりしてっていう。
山本:僕の会社って中小企業なので、役員ってあんまりいなくて、部長から役員になった瞬間って仕事どう変わるんですか。
北田:責任の重さは変わるんじゃないですか。だって役員っていうのは取締役、僕がやっていたのは取締役のことで、執行役員っていうのと違う役割。会社によって言い方も違って、執行責任と取締役ってのは経営だから。取締役は取締役会のメンバーなわけで、そうしたら社長変えれるわけよ。
山本:え、どういうこと?
北田:取締役が決議すれば社長も解任できるから。
山本:まあ、そらそうですね。
北田:だから取締役っていうのは経営に入る。執行役員だけの場合は、取締役になってない人もいるよね、今の会社では。だから取締役執行役員の人もいるわけ。会社の言い方っていろいろあるんですけど、取締になった瞬間に社員じゃなくなるわけですね。経営が変わるから、全く責任が変わります。取締役の営業部長だったり、営業本部長だったり、それは企画本部長だったり、いろいろ業務は、取締役に何を置くかって、生産、企画、営業、マーケティング、広報宣伝とか、部門別に全員置くか、取締役はもう3人ぐらいしか置かないか、それは企業によって違う、何人置くか。あとはそれがタイトルついて、役付きで常務取締役、専務取締役、副社長、それはいろいろですよ。
山本:仕事の内容は何するんですか。
北田:だから部門、取締役平取の場合は部門担当があるわけ、大体。営業を担当するか、経営企画担当するのもいたりもするけども、財務担当する人もいたりするし、取締役のついてる人でも、それぞれ所管部門って大体ある。何もない取締役っていうのは、たまに会社によってはあるけども、それは社長補佐とかそういう場合もあるけども、大体は所管部門があって、その責任を果たしてる。取締役メンバーとしては経営課題には意見を言えると。
山本:そっちのほうがおもしろかったですか。上に上がっていって経営にかかわるほうが面白いですか、仕事は。
北田:それは面白いよ、権限の範囲が。責任も増えますよ。責任も増えるけど、権限が広がるから、上場企業の中で取締役になるっていうのは本当に少数しかならないから、要するに。それはサラリーマンとしてはいわゆる上がりですよ、ほとんど。なれなくて終わる人がほとんどだから。部長クラスになってもね。いや、課長で終わる人もいるか、課長になれない人もいるぐらいだから。
山本:まあそうですね。
北田:だって何千人もいる会社、何万いる会社でみんなが役員になることないのよ。執行役までいっても取締役なれない人多いから。
山本:取締役は何年やったんですか。
北田:最終的にはダーバンの取締役になって、それからレナウンダーバンホールディングスの役員になって、それからレナウン合併して、通算すると7年、8年かな、それぐらいですね。
山本:おつかれさまでした。
北田:その間はね。で、出ちゃって、アニヤ・ハインドマーチの代表になったから。
山本:それは何で出たんですか。
北田:それは会社のいろいろ事情があって。経営的な課題があって、役員退任するっていうタイミングがあったんですね。それはレナウングループが置かれた環境がなかなか大変だったから。でも、僕はアニヤ・ハインドマーチジャパンっていうイギリスのブランドの会社なんですけど、たまたま出ることになって、そのときは何で俺がこんなちっちゃい会社にいるんだって思ったけど、それまでうちが大きな会社で大きな権限を持ってたし、部下の数もすごく多いでしょ、店頭あるし。で比べて、社長といえどもちっちゃい会社だったから。
山本:そこは誘われたんですか。僕ちょっとコネとかわかんないですけど。
北田:それはレナウンダーバンホールディングスの時代に、契約でまず作った。グループが作った。
山本:もともと?
北田:もともと法人としては。だからそこに、本店取締役をはずれて、そっちにいったわけよ。それは僕にとってみれば、
山本:勝ちか、負けかというとってことですか。
北田:そのときは一瞬思ったけども、でもそういうのはそのときだけで、行っちゃえば頑張っちゃうほうだから。
山本:かっこいい(笑)。
北田:あっという間に2年で店舗も広げて、売り上げ上げて、クロージングして。
山本:人気ブランドですもんね。
北田:言われたの、当時。何で
北田:が行ったら売り上げが上がんだよつって。
山本:カッチョイイ(笑)。そりゃうれしいな。
北田:やり方が違うんだよって。そんなん人には言わない話だけど。それはちょっと偉そうに聞こえるけども、受け持った会社は絶対何とかするっていう自負があるから。
山本:いいわあ。
北田:それは大小関係ないというのが、でもいい経験になったの、それが。
山本:それいくつぐらいですか。アニヤに入ったのは55ぐらいですか。
北田:55ぐらいかな。
山本:今おいくつでしたっけ。
北田:64だね。
山本:若いですね。
北田:気持ちは若いよ。
山本:体も若いですね。
北田:体力も若いよ。10歳ぐらいなら負けてないけどね。それは運よく、結果的には運よくなんだよね、僕にとってみれば。そこで勉強したことがたくさんあるから。大企業の組織論の組織の中にぐちゃぐちゃしたほんと駆け引きだ。
山本:めんどくさい。
北田:駆け引きだ、足を引っ張るとかあるわけよ。わかるよね?俺はそういうの大嫌いだから。
山本:とにかくもうけようぜっていう。
北田:いい会社にして、社員の幸せを欲しい、一緒になって利益上げて、社会に還元できりゃいいと、いい格好だけど、それが目標なわけであって、もう社内の足の引っ張り合いとかそういうの大嫌いだけど、リアルじゃないですか。
山本:そのときはアニヤ・ハインドマーチ、何人ぐらいだったんですか。
北田:100人いなかったかな。
山本:お店は何個です?
北田:店舗入れて?
山本:はい。
北田:10店舗ぐらいしかないし、本社も10人ぐらいしかいないし。そりゃギャップ多かったよ。それまでちゃんと秘書もいたり、全部自分でって、これどうやってやんの?みたいな。
山本:(笑)もう5年もやってないですからね。
北田:もう全然(笑)。経費の精算ってどうやってやんの?みたいな。出張になって飛行機の予約、自分でしてくださいって、あ、俺、自分で電話して予約入れるんだ。そういう、そっからだよ。ちょっと若いのにいい気になって役員になってたから、もう大反省だよね。
山本:大反省ですね。僕も反省しよ。
北田:自分のことは自分でできると。

「社長はいつも見られている」


山本:僕、恥ずかしながら、僕あんまりお金使わないタイプなんですけど、売り上げが8億、9億ぐらい超えだすと、グリーン車ぐらい乗ってもいいんじゃないかと思いだしたんですね。で、グリーン車、最近たまに乗るんですけど、たまに3回に一遍ぐらいはちゃんと自由席乗って、やっぱり昔を思い出すっていう行動してまして。
北田:それ微妙だよね。
山本:何でよ(笑)。何で?
北田:俺もアニヤやってからファーストも乗らない、ビジネスも乗らない、飛行機もプレミアムエコノミーぎりぎりみたいな(笑)。
山本:プレミアムエコノミー(笑)。
北田:ギリギリなんだけど、乗るの、飛行機を。グリーンにも乗らなくしてるしいいんだけど、思ったけど、ある程度組織になったら社長っていうのも部下からとってみたら、やっぱり代表だから、儲かってるんだったらちゃんとしたほうがいいと思うんだよね。赤字だったら当然そういうのはね。
山本:いや、キュッとしないといけない。
北田:黒字でちゃんとやったんだったら、社長がグリーンも乗らないのかよっていうよりは、ちゃんとグリーンぐらい乗れよみたいな、ね。夢がなくなるでしょう。
山本:(笑)笑われるもん、みんなに。
北田:夢なくなるでしょう、ただのケチ屋になる。ケチな男に。
山本:(笑)
北田:だから使える余力があるかないかで変わりますけども、あればそうしてあげたほうが、僕らは若いときは大きな会社だったから、課長になったらビジネスになるの、当時ね。
山本:めっちゃ偉い。
北田:そうそう。役員だったらファーストだもん。そういうふうに役ついたら給料増えたらいいんじゃなくて、そういう処遇が変わってくる、どんどん。
山本:だってビジネスで東京大阪だって3万円ぐらいでしょう?もっとか。
北田:いや、東京大阪でビジネスはないけど、ロンドンとかそういう海外ね。ビジネスクラスは。
山本:めっちゃかかるよ、3倍ぐらいでしょう。
北田:一番安いエコノミーの倍が普通のレギュラーエコノミーするじゃない?その倍がビジネス。その倍がファーストだから。今ロサンゼルスなんかだったら、安いチケット、片道5、6万でもあるぐらいだけど、普通のレギュラーでエコノミー買うと、やっぱり20万とか25万するんですよね。で、ビジネスで50万だから。
山本:たっか。
北田:ファースト100万だから。
山本:びっくりするわ(笑)。
北田:1回行くだけで。
山本:びっくりしますね。
北田:ね。僕はファースト乗るまでいってない、バブル崩壊して、その規定変えたけどね。バブル崩壊してボンときて、変えて。でもいいときはそういういい思いもさせてもらってるから、やっぱりちゃんと儲かってるんだったら胸張ってグリーン乗ったらいいと思うよ。
山本:いやあ、でもたまには思い出さないと僕、調子乗るんで、ちょっと思い出すために。
北田:だからそれは自分で律するってのは必要なんですよ。
山本:まあ僕の勝パターンですね、一つの。
北田:それは、俺ももうここ何年もそういうファーストとか乗ってないし、グリーン車も乗らないようにしてますよ。自分で払う、自腹で払うってのもおかしいけどね。マイレージでアップグレードしたりするけども、それは自分の範囲だから。それはまあでも、やっぱりそれはそれで、例えば飛行機で海外よく行ってたから、要するに航空会社が出すマイレージとかあるでしょう。あれは結局個人でもらえるわけじゃん、マイレージって。そうすると、僕らなんかダイヤモンドクラスとかになっちゃうわけ。そうすると、ダイヤモンドとなると待遇も全然違う。で、ラウンジもまた別なのよ、全然。
山本:ダイヤモンドのラウンジ入ったことない。すごいいいでしょう?
北田:ものすごくいいですよ。そうすると、そういうとこにまたそういう役員、社長やってるやつがいるわけよね。会ってそういうとこで、立場がそろうわけよ。そういうのを対外的に見栄じゃないけども、ちゃんとそういうとこで話もできたり。そうすると、そこでまた出会ったりするわけよ。例えば上海のラウンジで高島屋役員に会った、ああ、また何々さんみたいな。どうしたの、ここに何しに来てるんですか、どこどこの商談で、いや、実はこの開発あってみたいなさ。
山本:いい話っすね。
北田:そういうのもある。だから合ったクラスの社長はやっぱり知っといたほうがいいね。で、役員さんは平社員とは違うっていうのは、何かつけといてやったほうがいいですよ。やっぱり気分変わるから。やっぱり取締になったらここだけは上がるんだ、例えばグリーンは乗れるよね。何か平と違う、平の部長と役員は違うってのを処遇で変えといてあげたほうがいいですよね。わかりやすい。だって、なる夢がなくなるじゃない。給料、例えば10万超えました、20万増えましたってなるんだけど、そういう対外的な見栄えがちょっと変わってくるじゃない。
山本:接待費とかでもいいってことですよね。
北田:そうそう、そういう枠とか。よくあったのが、百貨店とかお付き合いしていろんなアパレル同士で、地方なんかで集まりがあるじゃないですか。行くじゃない、会議とか出て、コンペとかあって。で、行き帰り新幹線乗るでしょう、っていうときに、うちだけグリーンじゃないと恥ずかしいじゃない。みんなグリーン乗ってるのにさ(笑)。
山本:(笑)それはきついな。
北田:みんなグリーンでさ(笑)。
山本:それは恥ずかしい。
北田:恥ずかしいでしょう、やっぱり。
山本:やってられへん。
北田:取っちゃえばいいよね。あと自腹で払うみたいな話だ(笑)。
山本:(笑)
北田:そういうかっこ悪い、あんまり見栄っぱりじゃないけど、やっぱりそういうのって。
山本:礼儀というか。
北田:やっぱあの会社赤字なんだとか言われるの嫌じゃない?
山本:嫌、めっちゃ嫌や。
北田:そういうのって、ね。やっぱりちゃんとした会社はちゃんとしてますよ。そこは大事よ。それは社長も。
山本:いやはや、すいません。
北田:もちろんお召しになるスーツとかもパリッとしてるよねって言われたほうが。
山本:そうっすよね、全然いいです。
北田:それは特に御社のような業種の場合は、日常商談的にはスーツ着たりネクタイしてるでしょうけども、日常的なときって自由じゃない、社長って。
山本:自由です。
北田:そのときにやっぱどんなかっこしてるかが大事だね。
山本:何でですか。
北田:そりゃそうやん、社員みんな見てるんだから。
山本:社員ってほんま見てますよね。
北田:見てんだよ。
山本:めっちゃ見ますよね。
北田:ビシッとしないとだめなんだ。
山本:(笑)
北田:普通んときも。
山本:ビシッとしろ。(メモをとる)
北田:そう。そうすると社員はやっぱりうちの社長はかっこいいなと、やっぱりちゃんと稼いでる社長は違うなと。いいの着てるなと。
山本:耳が痛いな。
北田:何か汚いのもし着てたらよ?ね、商談んときはスーツ着てネクタイ締めるけど、普通の時はその辺のおっさんと変わらんな、って困るでしょう、やっぱり。
山本:困る。
北田:それは社員よく見てます。
山本:そうか。
北田:まだ若いんだし、そういうのにもっと興味持って、次、アパレルの商材扱うんだったら、相手の会社なんかも信用度が変わるから。この人ちゃんといいもん着てるなみたいなのわかるから。それ日頃からやってないとだめだね。
山本:日頃から、それも日頃からね。
北田:日頃から。
山本:日頃が大変なんや。
北田:誰も注意する人いなくなるでしょう。
山本:いなくなる。
北田:そう、それが問題なんです。
山本:トップやからね。
北田:絶対。そうなるのはしょうがないんですよ。奥さんと一緒に働いてたら別だけど、言える人いないじゃないですか。
山本:はい、そうです。奥さんからしたらどうでもいいですからね、旦那の服とか。
北田:だから、それはやっぱり会社内で自分を律するしかないよね。特にこれから大きくされていく中では、新しい人も入ってくるし付き合い幅も広がるから。海外は特にそうなんだ。外見ってのは意外と評価になるんですね。今、逆にIT産業なんかでTシャツでもジーパンでもいいって、逆にそういう流れもあるんだけどもね。大成功したスティーブ・ジョブズはいいよ。ああなりゃあもう、子どものTシャツだろうが何だろうがいいんだけど。
山本:顔がもう。
北田:もうそれでいけるからね。でもね、やっぱりそこそこのところまではしっかりちゃんとしてないとだめなんだ。それね、もう会うだけで商談成立しないとかある。何だこいつはってなる、そういうのってね。
山本:これ、僕の業界なんですけど、在庫処分で人様の在庫を安く売っていただいてるやつらが、そんなかっこいいかっこしたらとか嫌じゃないかな、とかあるんですけど、それどう思います?
北田:かっこいいものを求めないのよ。
山本:何、ビシッと?
北田:キチッとしてる。
山本:キチッとね、すみません(笑)。恥ずかしい(笑)。
北田:派手なもんは要らないし、地味でもいいからちゃんといつも紺のスーツ着てるとか、ワイシャツもだけど、いつもちゃんとしてるってことだよ。だからファッション、おしゃれって普通にそうで、目立つとか派手なことをおしゃれとは言わないから。その人の内面が表れるんですよね。
山本:表れますね。
北田:やっぱり雰囲気とかに出てくるから。だからそれは高いものじゃなくてもいいから、そこそこのもんでもいい、ちゃんとしてるっていう。
山本:メンテナンス。
北田:そうそう。しわしわのスーツ着てるとかいうよりは。
山本:むしろ、僕もぱっと見て嫌ですもん。
北田:嫌でしょ?ネクタイもするかしないか。しなくても別に構わないんだけど、しなくてもそれなりにちゃんとしてるかどうかってある。
山本:俺思うんすけど、ネクタイってみんなしてないからこそしたらパリッと見えますね。
北田:今、特にそうなってる。
山本:僕も実際そうでしたけど。すいません(笑)。
北田:最近しないのが増えたからするとシャキッと見える。
山本:シャキッとして見える、得ですね。
北田:そうそう。
山本:(笑)
北田:でも何となく、女性が見てもそう見えるのね。
山本:今、いい感じのことを(笑)。
北田:女性にモテようと思うか思わないかっつうの、個人差あるけど誰だってモテるよりモテないほうがどっちか言ったら決まってるので、場面場面でしっかりちゃんとしたほうがいい。
山本:本当ですか。
北田:ネクタイ締めないでかっこよくって難しいんだよ、結局。
山本:逆にね。
北田:そう、締めないで、ルーズに見えないで、かっこよくやるっていうのはなかなか大変なの。
山本:逆に楽っていうことですね。
北田:ネクタイ締めたほうがわかりやすいわけ。
山本:元ダーバンの人が言うんやから(笑)、それは間違いない。
北田:営業・企画、本部長やってますから。
山本:(笑)間違いないですね。
北田:営業マンに言ってたのは、販売員とかに男は指導、歩き方から言うから。
山本:え?
北田:たとえ5万のスーツでも20万に見える歩き方と、たとえ20万のスーツでも5万にしか見えない歩き方があるから、歩き方変えろってよく指導する。
山本:販売員を?
北田:そう。
山本:営業マンに。
北田:営業マン歩かせるから。だめ!とかってやるから。
山本:すごい。
北田:そう。
山本:だから商品をよく見せる、タダでよく見せられますよね。
北田:見せるというより、本人がよく見えるのよ。だからそのほうが、高く見えるのよ。5万のスーツも20万に見えちゃうから、逆もあるのよ。アルマーニ着てますって、それ本当かよっていう感じなのね。
山本:僕歩き方悪いからあかんわ(笑)。
北田:それは訓練なんですよ、習慣づけ。ちゃんと背筋を伸ばして。で、胸張りすぎないっていうこと。
山本:張りすぎないで?
北田:肩のライン、背筋は伸ばすけど肩のラインは自然にちゃんと落とした感じで真っすぐと、ね。ちゃんと足の歩幅が、足をちゃんとまっすぐ前へ出して、こういう擦らないで歩く。そうするだけで全然高く見えるから、スーツ。
山本:それ、僕、今まで歩き方をちょっと言われたことあるんですけど、ものが高く見えるからっていうのは刺さりますね。
北田:ものも高く見えるし、人物も、もちろん背も高く見えるし、かっこよく見えるよ。それだけで。歩き方は本当大事。女性なんかそれ意識する人多いけども、男性は猫背になりがちなのよね、割と。
山本:そうなんですか。
北田:うん。やや猫背になる。(胸を反らせて)で、こんなやつもいるけど、それは珍しいよね。こうやって歩くやつ、そんなに世の中に、まあ大阪のおっちゃんみたいのは。
山本:それは大阪のおっちゃんですね。
北田:なにわのこんな金融道みたいなこんなやつがこう歩くっていう。こういうのってあんまいないじゃない。
山本:確かに。
北田:大体はこうなってるんだよ。視線をどこに向けるかとかそういうのがあって、ちゃんとする。それが大事。全然変わりますよ。
山本:変われそう。
北田:高いもん着るって言ってんじゃないんだよ。ちゃんとしなさいっていうのはそういうこと。社員から見てもそう見えるし、日頃からそういうふうにやられてると、キチッとしてるな社長は。最近どうしたのかな。
山本:社長が叱っても、ああ、そうかと。
北田:なんだね。風格が出てくる。
山本:風格出したい!
北田:徐々にね、徐々に。
山本:出したいな。風格出ますかね。
北田:ギャーギャー言わない、ね。ポイントをきちんと話をしたり。
山本:ギャーギャー言うんや。
北田:ギャーギャー言わない。
山本:ギャーギャー言ってんな(笑)。ギャーギャー言わない。
北田:感情的に言わない。心がけないとできないことですよ、誰も注意しないから。
山本:社長やしね。
北田:社長注意しないです。私が顧問の社長さんとたまに行って注意するけど。
山本:(笑)すごいめっちゃ言われそうや。
北田:そういう顧問が必要ならお受けしますよ。
山本:(笑)
北田:月1回ぐらい。
山本:ほんまですね。
北田:やっぱり見られるってことは意識しないとだめですね。見られてるっていうのは。
山本:確かにありますね。
北田:僕はメンズの会社にいたんでね。レディースの会社の男子社員って意外とおしゃれじゃないんだ。
山本:何でなんですか。
北田:なぜか。レディースの会社は女の子がみんなおしゃれだし、自社商品着るし。でも男の社員って自社商品がないからだな、言われないんだろうね。何でファッション業界にいるのにかっこ悪いのか、ってのがたまにいるんだ。もしくは極端に意識しすぎのやつ。もうやたら意識しすぎたかっこをしてるやつって。
山本:普通が一番ですね。
北田:普通。普通ちゃんとしてんのは、特に上層部は、経営者はそうでないと、目立ちたがりは別ですよ。そういう派手なのはね。たまにいますけどね、目立ちたがり。
山本:僕の商売は商売なんで、そうならんようにします。
北田:やっぱり誠実な感じとかいうのは、印象的に大事じゃないですか。それはしゃべり方にも出るし、姿勢とかも全部出てくるから、印象として。だって1回しか会わない人って多いでしょう。
山本:多い。
北田:社長になると。僕もそうですけど。
山本:めっちゃ多い。
北田:偉くなればなるだけ、しょっちゅう会わないんですよ。たまにどこそこ、誰かとセットされて会う。そうすると1回勝負なんだよね。そのとき、印象お互い変わるからね。
山本:そう言われたら毎日勝負やな。いきなりいい人紹介されることもありますもんね。
北田:そう、1回。だからそういうわけ。だから来客があるときもやっぱりキチッとしてないと、今日会うつもりじゃなかったからって逃げられない。日頃からちゃんとしてやってるとピシッと会えるわけ。
山本:
北田:さん、じゃあ夏って半袖着るんですか。
北田:着ないよ。
山本:やっぱり!やっぱりそっか。
北田:半袖ってのは、
山本:許せない?
北田:クローゼットにはない。
山本:僕も実は半袖着ないんですよ。何となく半袖嫌やなと思って着ないんですけど。
北田:まあ、そりゃ合理的に考えれば、今、夏は暑いから半袖でいいっていうのは否定しないですよ。僕は主義として、若いときから着たことない、半袖は。
山本:ジャケットも着るんですか。
北田:ジャケットも着ます。
山本:うわー、それはすごいな!
北田:それはもう習慣。やせ我慢と言われようが習慣。別に半袖も涼しいだろうなっていうのは反対しないですよ。それだけで仕事に行くっていう発想がもうだめだね、そういうのは。
山本:(笑)そうっすね。
北田:端っから働く準備ができてないよね。
山本:これはすごい社長やな。
北田:特に上層部よ。若い社員に強要はしないよ、それは。だって汗水流してやるのに、上着着てろとは言えないから。上層部になったら看板背負っていくやつは、部長クラス以上はもうそうじゃないとだめだよね。ビシッとしてないと。会社のイメージになるから。あそこの会社、誰来てもちゃんとしてるよねとかさ。
山本:いいっすね。誰来てもちゃんとしてるよねと。
北田:うん。そう言われるようになるわけです。顔の形とか背の高さは変えられないけど、そういうのって変えられるから。ちゃんとしてるな、やっぱり会社の教育、社長の教育行き届いてるんだなって感じるし、そうすると言葉遣いも変わってくるし。
山本:めっちゃ耳痛い(笑)。
北田:そういうことなんですよ。変わってくるんですよ。
山本:しかも正論や。くそー。
北田:いや、それはでもちょっと考えれば、意識してればできるよ。
山本:わかるんですけど、続けるってことが大変ですよね。
北田:毎日だからね。
山本:好きにならんとだめですよね、やっぱりそれが。
北田:そんな研究しないといけないことではなくて、特に管理職はそういう意識をさせたほうがいい。そうすると、Shoichiさんっていう会社の雰囲気がだんだん業界の中で、
山本:よくなってくる?あいつらは違うなと。
北田:在庫処分会社なのにちゃんとしてるよね、みたいな。
山本:それ、一言最高ですね。
北田:アパレル行ったら、アパレルの社員よりちゃんとしたやついたらかっこいいじゃない。
山本:そうですね、めっちゃかっこいいですね。
北田:ね。
山本:めっちゃかっこいい。
北田:そういう雰囲気作りを社内でしていくと、将来いいですよ。きっと5年後10年後に。
山本:それいいですね。ちょっと頑張ります。僕、一応、死ぬまでやるっていうのは、僕の(笑)、
北田:死ぬまで?仕事?この会社?
山本:死ぬまでバッタ(在庫処分の業界用語)やるっていうのは僕のあれなんで。
北田:それは何歳まで生きるかは人生わからないけど、そのぐらいのつもりでないと、オーナーは大変だと思います。そういうのを意識して、ニ、三、テーマを持ってやられると、毎年テーマを持ってやると、社員さんもリフレッシュできていいんじゃないですか。やっぱり慣れてくると惰性になってくるから、だんだんどうしても。新しいテーマを持つようにしていくと意識するから、言われたら。社長自らそうやって、よし、いっちょ俺もやってみようとか思うかもしれないし。それを評価するとか何か、叱るとかいうほどでもないけども、要するにお互いに注意し合ったり。いいの着てるなとか褒めてやればいいじゃないですか。
山本:それはめっちゃ喜ぶでしょうね、向こうも。
北田:ね。ちゃんとしてるよね、ね。
山本:
北田:さん、アメリカ人ですね。
北田:アメリカ人って(笑)、どういうイメージだよ。
山本:だって、日本人ぽくないですね、やっぱり話してる感じが。いい意味でって、上からですけど。
北田:基本ポジティブですよね。ネガティブなんてあんまり考えない。失敗はあるけど忘れてるね。
山本:(笑)
北田:根に持たない。
山本:それ重要ですね。
北田:成功させたほうが楽しいんだから。わかるでしょう、株主だろうがファンドだろうが、結局業績上がったからみんな言えることでしょう。そっち考えればいいわけあって、こうしたらだめになる、ああしたらこれがだめとかネガティブばっかり考える人いるじゃない。
山本:いますね。
北田:このブランドだめ、あれ出したらだめって。
山本:アパレルの場合。
北田:そういう人、長生きしないほうがいい。
山本:(笑)
北田:世の中のためにならない。人の足引っ張ってみたり、悪いことばっかり探してきてさ。それ、楽しくないやろ、人生ね。
山本:いいところを伸ばさないと。
北田:うん、いいところを伸ばしてかないと。学校と会社の違いって、よく昔から僕は言うんですけども、学校は学生なり親が金払って行ってんでしょう。金払ってんのは親とか本人だから、学びを提供するわけです、学校ではね。でも会社っていうのは会社が金払ってるんだ。真逆なわけですよ。教えてもらおうなんて、もうそれあっておかしいってなもんです。
山本:最近それ多いですよね。
北田:ね。本人の、だから努力が必要になるわけです。会社にお金いただくんだから。そしたら会社がどう考えるべきかと、学校だったらこの子の欠点を直そうとするんです。こういうとこだめだから、こういうとこ直そうと。会社は欠点直すの待たない、いいとこ伸ばすわけ。欠点を直す必要全くないんです。いいとこだけ伸ばせばいい。これは学校と会社の真逆のところなんだ。
山本:強みですもんね。
北田:そう。その人を選んだのは会社だから、その人のいいところを選んでるわけでしょう。100点の人間なんていないわけだから、
山本:絶対おらん。
北田:100点を求めちゃいけないんですよ。いいところを見つけたらから採用したんだったら、そのいいところを伸ばしてやればいいんですよ。学校はできないことをちゃんと成績が上がるように教えなきゃならない。これ、全然違うから、生徒と社員とは全く真逆。それは会社側も判断を変えたほうがいいよね。だから、評価でもだめなとこ探す評価はあんまり意味がなくて、そいつのいいところは何だろうか。そうすると、適材適所も考えていくわけですよ。

「赤字企業を黒字化した手法」

第一回対談


山本:北田さんは、また偉いさんやったあとに、アニヤ・ハインドマーチいって一番最初にやったことって何なんですか。これを取り組まなあかんなと思ったというのは。
北田:それはね、一時赤字だったでしょう。大きな会社じゃないから、店舗数も10店舗、12、3店舗しかないし、契約の問題があったんで、
山本:あれって2年ごとですか。
北田:いや、5年契約なんだけど。
山本:結構長いな。
北田:海外の場合、大体5年か10年ぐらいやるんですよ。で、もう3年経ってたの。ちょうどいいね。で、3年間赤字なわけですよ。会社、グループとしては、契約を更新するかしないかっていう判断しなきゃいけない、1年ぐらい前には。交渉は1年ぐらい前に始まるから。だからどっちかいうと、もうネガティブだったわけです。話としては。
山本:赤字やしね。
北田:だから、俺が行くってどういうことだと。要するに判断してくれっていうわけ。要するにやめたほうがいいのか、続けたほうがいいのか、判断してほしいっていう要望があったわけですよ。かといって5年契約残ってるから、とりあえず。で、赤字のまんま嫌じゃない、会社としても。それで行ってみて、じゃあ、そこで何を最初にするかっていったらヒアリングが要るんですけども、
山本:スタッフ?
北田:スタッフのヒアリングも要るんだけど、外、得意先のヒアリング。
山本:すごい、かしこ。
北田:これが一番いいの。
山本:めっちゃ賢いですね。
北田:社内のやつに聞いても、自分を守ろうとした発言しか出てこないんだよ。私これやってます、あれやったの私です、って自己防衛に走るだけですよ。みんなちゃんとやってたら、赤字になってないだろうと俺は思うわけよ、要は。
山本:今の一言すばらしいね。
北田:そうすると外で聞くの。それ百貨店とか行って、バイヤーさんとかに会いに行って、今度、僕が社長になったって来て、このブランドどうですかって。そうすると、それはいろいろ評価言うじゃない、初めて会うから、言いやすいわけね。商品いいです、悪いですって。でも、そのときに商品とってもいいんですよって言われたの。販売員どうですかって。いや、優秀だって言うわけ。
山本:いいやん、めっちゃ売れるやん。
北田:そういった店が1店舗じゃなくてみんなそう言うの。商品もいいって言われるし、販売員も優秀だって言うし。
山本:値段もそんな高いしね。
北田:うん、何で売れてないんだと思って。そこで原因がわかるわけ。それやり方がおかしいの。何がやり方おかしいかっていったら商品仕入れだとか、発注だとか、運営だとかいくつか中にあるんだけど、基本的な評価、販売員がもうだめですよって言われたり、商品これだめですよって言われたら、もう手の打ちようがないわけよ。
山本:そらそうやわ、手の打ちようがない(笑)。
北田:こら無理だと。一から販売員全部変えて、商品、だってロンドンで決めてるんだから、
山本:商品は無理やな、それ。
北田:ロンドンを根本的に変えられない、こっちは。
山本:いい商品やから売ってもらってるわけで。
北田:ライセンスだから勝手に変えられないから。両方、商品がよくて販売員いいんだったら、これはいけるかもしれないと思ったの。そっから分析をすぐ始めて、俺は3カ月で分析をするわけよ。店舗別に分析だと売り上げだとか何やらだとか。仕入れ、個数、もう一つ基本的にはああいうライセンス契約は契約書、すごい何百ページもある英語の契約書なんだけど、それをまず俺は確認するわけ。どういう契約書になってるか。見てみると契約書で問題もあったりするわけね。これはちょっと問題があるかなって、そういうのわかる、俺はそういうのやってたから。海外もやってるし。だから、今の課題はこういうことでもうちょっとこういうことだっていうのちゃんと整理して、そのとき思ったのは、これはうまくいくぞと思ったの。だから、こういうふうに変えたらうまくいきますよっていう案を出して、
山本:それはすばらしな。
北田:それをグループ役員会に通して、1年見てくれと。1年の間にこれを改革できれば、契約継続しようと。でも、うまくいかなければ、もう契約やめにしたほうがいいと。お金どんどん突っ込んでその赤字を吸い入れてもしょうがないから。でも5年はやんなきゃいけないけどね。途中解約したらもっと問題が増えるし。で、そういうので自分なりに分析したものを資料、英文で全部作って、で、ロンドンへ飛んで、時間ないから直接交渉へ行くわけ。新しくなった人間で。社長今までいなかったの、その会社ってね。本社の社長が兼務したわけで、いわゆる部長クラスが担当責任者なわけ。要するに、実際のそのぶんの会社だけを責任を持ってやってる人いなかったみたいなもんだから。俺は、社長っていう立場になって分析もし、改革案も作って、日本の役員会で承認されたあとにロンドンに直接交渉へ行って、それで向こうのCEOとデザイナー、トップと会って3日間ぐらい交渉したわけ。その資料っていうのは自分なりに完璧なものを作っていったから、そしたら向こうが感激したわけよ。
山本:わかったと。
北田:こんだけの内容見たこと、報告聞いたことなかったと。日本がこんだけ苦しんでるとは知らなかったと。要するに、正しい情報を与えてないわけよ。
山本:涙出る、それ。
北田:うまくやってますみたいな。
山本:よくあるね。
北田:向こうで本音でちゃんと話すと向こうもいい人なんで、本当に日本は頑張っていつも毎年、バイイングって買うわけよ。ミニマムバイイングって契約上あるから何万ポンドとかあって、店舗数何店舗出して、デベロッピングプランを出さないといけない。いろいろ契約上、足ガッて固められてるから。日本はやってんだけど、やり方が下手なもんだから、約束守ってるけどロンドンこそ約束ちゃんと守ってくれてる。バイイングも買ってるし、店も出店してるじゃない。でも売り上げちゃんと予定どおり上がってないから恥なんですよ。投資を先行して。ところが全部を各3年間のBSとPLを全部持ってって日本側は。見たことないって言われるの、今までね。公表する義務もないから、会社は関係ないから。全部裸で、これじゃあ、あなた経営できると思うかと突きつけたの。これじゃあできませんよね、って向こうが怖がったって。じゃあ何をすればいいですかっていうのが、こことここを変えてくれみたいな。契約書はこうなってるけど、ここを変えて、ここ修正、ここ修正って、契約上の修正させてくれれば自信あるって。そしたら、もうすぐ直すって。そしたら翌年、売り上げがガーッと上がったの、やっぱり。2年目で店舗数も20店舗に増やして一気に黒字化して、売り上げも上がってマーケットの評判になったの。
山本:そうですよね。
北田:どんどん出店の話がくるし。今度はいいとこ自分で選べるし、場所も。出てくれと、出たいとで大きな違いだから。
山本:わかります。
北田:いい場所を押さえられるし、条件もよくなるし、いや、もう70以下は受けませんって。
山本:むっちゃいい。
北田:じゃ、出てほしいみたいな。好転すれば一気に変わるわけ。それまでは売れなくてどうなってんですか、ってクレーム言ってたやつがみんな展示会も来るようになるし。で、やり方も変えてね。そっからまた契約延長を1年前にした。で、合意した。
山本:みんな、にこにこですね。
北田:そうそう。
山本:すげえな。
北田:そういうのがやり方の原点で、
山本:商売ってわかり始めたら早いですもんね。
北田:そうそう。この流れを作ってあげれば、あとは自分がやろうがやるまいが一気にいくわけ。でもチェックするポイントはちゃんとあるんだけどね。もちろん、見てないとだめ。やっぱり在庫の問題とか品ぞろえっていうのはやっぱりMDうんぬんとかも大事なのね。販売員ってモチベーション上がってくるからどんどんできてくる。もういいほうに回るわけやん。そうするとお給料も上げてあげられるし、どんどん上がっていくパターン。

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松見 充康氏対談 第二回対談
尾井 善雄氏対談 第三回対談
星 正壽氏との対談 第四回星正壽氏との対談